セミナーレポート
2023.9.25
【開催報告】人と地域から繫がるクラフトビールの魅力
【第一部】
横浜ビール醸造所の田尻営業部部長のお話しからスタートです。クラフトビールの魅力、取り組み、ペアリング方法について教えていただきました。
■クラフトビールの魅力
・100種類以上ある多様性。個性尊重の時代に選択肢を広げることができる
・ビールは食中酒。ワインのように食事やデザートと共にペアリングを楽しむもの
・材料の生産者、作り手(醸造家)、飲み手のつながりを身近に感じることができる
・製品を作る段階から、ラベル、缶のデザインまでアートのような創意工夫、奥深さをより自由に表現できる
■取り組み
次いで、クラフトビールを通して地域を盛り上げるための取り組みをご紹介いただきました。季節限定ビール「めぐりあい」シリーズはラベルに果物だけでなく、生産者さんやその地のイメージが伝わるようなデザインです。地元の生産者、地域を何度も訪れ、ラベルデザインを担当されている作家の木村薫さんも一緒に訪問するからこそ伝えられる生産者の想いが表現されています。かつて西の岡山、東の神奈川と言われていた桃。殆ど今は作られなくなった神奈川産の桃をこのビールから知った人も多いかもしれません。間引きされた緑色の小さいみかんを廃棄するのでなく、その果汁をビールに活かして生まれたビールなど一つ一つにストーリーがありました。またフットサルチームを作ったり、マラソンを始め多くのイベントを企画してファンコミュニティを作ったり、スポーツ、アート、教育など地域とさまざまな取り組みをご紹介いただきました。
■ペアリンクのポイントについて
日本で一般的なビールはジャーマンピルスナータイプと言われるタイプ。これは塩味との相性が良いことから、ビールといったら唐揚げや枝豆などをイメージしがちですが、ビールのタイプによってペアリングの幅、組み合わせは大きく広がります。
・同じ味わいの組合せ(例:甘味×甘味、酸味×酸味など)
・異なる味わいをやわらげる組合せ(例:甘味×苦み→ホップの苦みを和らげる、など)
・異なる味わいで供し合う組合せ(例:塩味×甘味→塩味の焼き鳥とピルスナーで麦の甘味を強調するなど)
【実演調理メニュー】
コース仕立ての前菜からデザートまでの5品に5種類のクラフトビールをペアリングして試食・試飲していただきました。
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料理1:『真鯛の昆布風味 柑橘とオリーブオイルと共に』
合わせたビール:『横浜ウィート』
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1品目は、刺身用の白身魚の切り身を使用。切り身は一般的な昆布〆ではなく、粉末にした昆布茶を軽く振りかけて作ります。オレンジ、ライム、レモンの果肉が加わり味も香りも爽やかです。野菜の千切りと合わせ、醤油とハニービネガーのドリンクベースを使ったさっぱりソースでいただきます。オリーブオイルは別添えでお好みで。合わせたビールは「横浜ウィート(缶ビール)」。横浜市瀬谷区の岩﨑農園の小麦(ウィート)を原材料に醸造したベルジャンウィートエール。ベルギー酵母による華やかな香りと、小麦の優しい味わいが魅力的な白ビール。横浜ビールのスタッフも小麦の種まきから刈り取りまで参加したそう。横浜でも小麦を作っている事を知って欲しいとの生産者岩﨑さんの想いを伝えたいと作られたビールです。缶のデザインも横浜馬車道の浮世絵が使われたデザインになっています。
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料理2:『帆立貝柱のさっと網焼き 白い酢味噌と里芋』
合わせたビール:『ヴァイツェン』
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2品目は、さっと網焼きした生食用の帆立貝と蒸して皮をむいた里芋を盛り付け、白味噌と「赤酢仕立て 熟寝合わせ酢」、マスタード、砂糖を混ぜたソースをかけ、秋らしく菊花を散らしました。
合わせた「ヴァイツェンビール」はドイツ酵母由来のバナナやヴァニラをほのかに感じるフルーティーな香りの白ビール。苦味が少なく、普段ビールを飲まない方からの人気も高いとのこと。やわらかいテイストでした。料理に使用した「赤酢仕立て 熟寝合わせ酢」は千葉県の私市醸造㈱の商品となります。「熟寝」と書いて「うまい」と読みます。家庭で本格的な江戸前鮨を楽しむために考案されたもので、長期熟成された酒粕からくる赤みを帯びた色や香りとマイルドながらすっきりした味わいが帆立の旨味を引き立てていました。
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料理3:『蝦夷鹿ロースの赤酢とマディラ酒ソース、ゴーヤとメルバトースト添え』
合わせたビール:『横浜ラガー』
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3品目は、蝦夷鹿のロース肉を焼いて、酢、マディラ酒、ブランデー、鹿のフォンで作ったソースでいただきます。付け合わせはゴーヤのソテーです。
フレンチながら和の調味料「淡麗芳醇赤酢 塾寝江戸前酢」を使用しましたが、さすが日本の食材同士、相性はぴったり。ソースに甘みと深みを与えています。これに合わせたビールは「横浜ラガー」です。ホップ由来の柑橘を思わせる清々しい香りと、しっかりとした苦みのバランスが絶妙なラガービールで、肉料理など濃いめの味の料理によく合います。横浜ラガーの苦みと鹿肉の旨味を掛け合わせることで、肉の旨味を際立たたせる手法です。
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料理4:『キノコと鶏肉土鍋炊き込みご飯』
合わせたビール:『アルト』
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4品目は、土鍋で炊いた炊き込みご飯です。本しめじ、椎茸、舞茸の3種類のキノコと鶏肉を醤油とお酒で薄く味付けし、蒸らし後にごま油を少量加えて混ぜ合わせ、食べる際に好みで塩を振っていただきます。これに合わせたビールは「アルト」。ドイツデュッセルドルフ伝統の琥珀色のビールで、焼きたてのビスケットに例えられるローストされた麦の香ばしさと酵母によるほのかに甘い香りが特長です。苦味は控えめでふくよかな味わいのあるビールです。土鍋炊きご飯でたくとお焦げができ、また胡麻油を使用していて、それらの風味がアルトビールにマッチします。
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料理5(デザート):『口溶け優しいチョコレートのフォンダンとマロンクリームのコルネ』
合わせたビール:『ハマクロ』
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5品目はチョコレートのデザートです。大きな生チョコレートのイメージです。マロンクリーム(ボンヌママン)を詰めたコルネ(餃子の皮を利用)とオレンジピール、カスタードクリームを添えています。これに合わせたのは「ハマクロ」。黒ビールのイメージを覆す軽快さで苦みを抑えてアルコールも低めに設定されたビール。IPA(「India Pale Alle」の頭文字をとったもの。ビールの原材料に使われているホップを通常より多く使用し、ホップ独特の香りが強いのが特徴)らしい柑橘の香と、口に含むとローストしたモルトの香ばしさがバランスよく、さっぱりと飲める黒ビールです。甘みと焦げを合わせることで焦げ感を引き立たせました。
帰りに、間引いたみかんの果汁を使った爽やかな「グリーンシトラスピルスナービール」や料理にも使用した「赤酢仕立て 熟寝合わせ酢(私市醸造)」、ボンヌママンのジャムや種入りマスタード(エスビー食品株式会社)を参加された皆さまにお土産としてお持ち帰りいただきました。
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参加されたお客さまの声
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・ビールと食事のペアリングについて、学ぶことができました。今後、店舗にて共有して参ります。
また、ビール作りに生産者の方の想いを込めるというスタイルには大変感銘を受けました。地産地産、地産地飲により奥行きを持つためにはという宿題をいただいたので自分なりに考えて行きたいと思います。
・クラフトビール店勤務なのでペアリングがとても実用的で参考になりました。
・赤酢のソースレシピはたいへん勉強になりました。ご飯とビールの組合せは初めてでしたがとても美味しかったです。
・美味しいお食事とビールで幸せな学びの時間になりました。特にビールのペアリングは食事との相性も良く、相乗効果を体験することが出来ました。
・ビールは最初の一杯ではなく食中酒としてワインや日本酒同様料理に合わせられ楽しめるという発見がとても良かったです。
今回のセミナー・取り組みを通してビールの食中酒としての提案が出来る飲食店が増え、ビールを飲む楽しみ方の幅が広がると嬉しいですね。
【開催協力】株式会社横浜ビール、私市醸造株式会社 【商品協賛】エスビー食品株式会社
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セミナーの様子
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当日のお土産
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季節限定ビール それぞれのラベルに生産者の想いやストーリーが込められている
日本地ビール協会公認ビアテイスター、同ビアコーディネーター
ビアジャーナリストアカデミー2期生
「ベル・フランス」、京都「ロランジュ」、横浜「エクセレントコースト」にて修業、1992年 渡欧
「オーベルジュ・デ・タンプリエ」、「ローラン」、「ル・ビュームーラン」、「ジャン・マルク・レノー」(以上フランス)
「エル・カプリッチョ・デ・ガウディー」(スペイン)にて修業、1995年 帰国
「タトゥー東京」、「クープ ド クール」にてシェフをつとめる
2010年「厨BO!SHIODOME」シェフ、2020年より「厨BO!YOKOHAMA」シェフ