セミナーレポート
2023.1.23
【開催報告】「味覚とメニュー開発のプロが考える 羊肉料理の新しい可能性 」 オリジナルレシピ開発セミナー
■【味覚学から考える味付ジンギスカン】
ラムバサダーであり、社団法人MIIKU日本味育協会 代表理事でもある宮川順子さんの「人間は、生きることに必要な成分が口から入ると『おいしい』と感じます!」という言葉から始まりました。
味は「基本五味」(スライド参照)として分類されていますが、他にも「カルシウム味」「油脂味」の研究が進んでおり、近いうち「七味」になるかもしれないそうです。
またメインの「うま味、甘味、塩味」と、サブの「酸味」「苦味」に分けて考えると味を設計しやすいこと、うま味は相乗効果があるので、1つよりも2つ3つと重ねると倍増すること、などを教えていただきました。
「このバランスを磨いて美味しい料理をつくるのが料理人なんですね。」という言葉が印象的でした。
■【世界の食文化をヒントに。どことも違う、他に無いオリジナルレシピを。】
「スープストックトーキョー」やJALの機内食のメニュー開発に携わるフードプランナーの桑折(こおり)敦子さんには、自身が手掛けた商品を例に挙げながらメニュー開発のポイントを、「お客さまに提供する価値」を切り口にお話しいただきました。
美味しいことは大前提とした上で、
●極上の素材、通常手に入れにくい、料理の仕方が分からない希少な素材を生かして届ける
ex)指定された生産者がつくる希少な食材「リーキ」を使ったスープ。
●手間暇やプロの技術を届ける
ex)オマール海老のビスク
●身体を労わる食材や組み合わせを届ける
忙しく、健康に気を遣っている女性向け。一度に多くの身体に良い食材が摂れる。日本の食文化も大切にしたい人へ。
ex)8種の野菜入りスープ、七草がゆなど。
●専門店ならではのこだわり(スープ店でいうところの出汁)を届ける
●好奇心をもたらす世界の食文化を味わうスープを届ける
ex)夏には暑い国のスープを参考に、タイ、ベトナムなど(酸味、ハーブの爽やかさ)など。
各テーマに沿って実例が紹介されたので、取り入れやすく、刺激のある内容でした。
最後に「商品開発時には、みんなからいろいろな意見が出ると思いますが、それらを全部をきいていると最後に良く分からないピントがぼけた商品になりがちです。『誰にどういうものを提供したいのか』を明確にして、それに照らし合わせて判断していくことが大事です」という言葉に実感がこもっていました。
■【トークセッション 宮川 × 桑折 × 越坂部「新商品、何が足りなかった?」開発秘話】
昨年「味付ジンギスカングランプリ」にエントリーし、受賞できなかったラム肉を試食しながら、宮川さん、桑折さんが何が足りなかったか、どうやったらもっと美味しくなったかをアドバイス。味付ラム肉を提供したのは「羊のロッヂ」(ラム肉専門店/西早稲田)、「隣のロッヂ」(高田馬場)オーナーの越坂部(おさかべ)忠生さんです。
●1品目「ミントとレモングラスのパクチー漬けラム肉」
リーフをたくさん入れているので少し華やかな場で食べてもらいたいと開発したもの。ご飯よりドリンクと合わせてほしいというオーナーに、「ざっくりドリンクというのではなくもっと具体的に設定して(ビール?ワイン?など)、その味とのコンビを突き詰めて尖らせた方がよい」、「国籍がイメージできると頼みやすい」、「リーフをもっと刻んで香りを立たせるとよい」などの助言がありました。
●2品目「アボカドとバナナの西京味噌漬けラム肉」
焼き肉のタレにバナナが入っていることから着想し、南の国のアボカドを合わせ、さらに味噌で合わせたもの。
「意外とバナナの味がしないね」「酸味などのパンチがあれば、はい次、はい次とドンドン食べたくなるのでは。そうすればアルコールやご飯なども付いてくると思う」という感想でした。
最後に、桑折さんから「昨年のグランプリの審査を通して思ったことは、ラム肉の臭みを消そうという方向に行き過ぎているものが多かった。もっと活かす方に考えてみるのもよいのでは?甘辛ダレから脱却して、塩ベースにするとか。羊肉の新しい価値を提供することに、もっと挑戦してほしい。」というアドバイスもありました。
保存ができて、調理も簡単な味付ジンギスカン。定番のジンギスカンの美味しさは勿論ですが、新しい味付けを開発することで、さらにラム肉、羊肉の魅力が広がるのではないかと感じました。このセミナーが新メニュー開発につながり、お店のファンや売り上げUPにつながるとよいですね。
次回の味付ジンギスカングランプリは、2023年2月1日からエントリー開始です。
ご視聴いただいた皆さま、講師の先生方、どうもありがとうございました!
(写真上より:①宮川順子氏、②基本五味、③桑折敦子氏、④桑折氏資料、⑤中央 越坂部忠生氏、⑥試食した羊のロッジが昨年エントリーした2品)
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▲司会の菊池一弘さん(ラムバサダー、羊齧協会 主席)。「味付ジンギスカングランプリ」運営事務局長も務める。羊肉料理を素人がおいしく楽しく食べられる環境作りに注力しています。
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▲MLA(ミート・アンド・ライブストック・オーストラリア)の三橋さん。
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▲「ミントとレモングラスのパクチー漬け」。講師の先生方から、いろいろなアドバイスがありました。
イベントやSNS などを通じて、羊肉やオージー・ラムの魅力を日本全国に伝えます。
(WEBページ:aussielamb.jp/lambassador/)
身近だけどあまりよく知られていない「味付ジンギスカン文化」を、もっと多くの人に知ってもらいたい!とMLA(ミート・アンド・ライブストック・オーストラリア)が2022年、日本初の「味付ジンギスカングランプリ」を開催。
2023年は新たに飲食店で提供されている(または予定の)オリジナル味付ジンギスカンを対象とした「ニューウェーブ味付ジンギスカン」部門も加わり、開催が決定。
「優劣をつける」ものではなく、味付ジンギスカンの魅力を多くの人に広め、羊肉の魅力をしってもらい、羊肉の普及と販売促進を目指すグランプリ。
(WEBページ:https://jingisukan-gp.com/)